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フレディ写真展〜口ひげを縁取るはアイライナー [音楽]

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ちょうど10年前のフレディの命日11月24日、
土曜日だったので私は家でのらりくらりとクイーンなど聞いていて、
なんとなく普段聞かないラジオなどつけてみたら、
いきなりオドロキのアナウンスが。
渋谷パルコにてフレディ・マーキュリーの写真展(↑上のポスター)、
というのは知っていて、その内行こうと思っていたのだが、
なんと本日フレディのコスプレで行ったら記念品プレゼント!!
会場はROLLYさんやコスプレしたお客様で賑わっていますヒャッホー!!
みたいな内容にえええ〜っと涙眼になって慌てる私。
クイーンファンとして名高いROLLYさんも気になるが、
それより何より、記念品?限定記念品ですって!!?
と貧乏根性丸出し、というか命日に限定の!フレディの!記念品を!
もらうということ、それがプライスレス。

その時点で3時だか4時、
一刻も早く向かわなければ!!
が、コスプレ!時間がない、手持ちのものでどうにかせねば!
本当は初期フレディみたいな格好がしたい、
さもなければ、その頃髪が短目だったので、’I’m going slightly mad’
の時の髪型(↓これ)なら結構再現出来る、というか普段からそんな髪だ。

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しかし服のハードルが高すぎる、
今なら難なく手持ちのもので似たようなものが出来るだろうが、
10年前、私は少々若かった、家中探せばどうにかなったかも知れぬが、
とにかく時間がない。
とりあえず目についた手持ちのもの、
合皮の皮パン、合皮のキャスケット、よし、ではしかたがない、
80年代アグレッシブ・フレディ・スタイルを目指そう。

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(↑まあこんなイメージ)

しかし時間がない、とはいえ、
上半身裸はさすがにヤバい、胸毛ベストも持っていない、
いや、そんなものあるのか、いや、そんな問題ではない、
とめまぐるしく考えた結果、白いランニングシャツを着用。
それもちゃんとしたものではなく、10年近く着ているリアル肌着で妥協、
しかもフレディは皮帽子の時はランニングを着ていない、
ああもういいやあとは勢い。

というわけで、皮×皮に上は何か羽織って急いで渋谷へ。
パルコに走り、展示会場まで駆け上がり、トイレにダッシュ。
何故ならPVCっぽくないただの皮パン、しかも肌着では弱いと感じた私は、
最終兵器、口ひげを装着することを決意していた。
しかし装着するものがない。
買う暇もない。
仕方がないので、アイライナーで手描き。
本来の用途で目化粧をグリグリと更に漆黒に補強した後、
鼻の下に緊張と焦燥と躊躇で若干震える線で口ひげを描いた。
そして上に羽織っていたものを脱ぎ、ランニング(肌着)に。
あれ?ギャグでしかない、やらない方がよほど良いのでは…?
と理性に後ろ髪を引かれながらも会場に走る。

口を手で押さえながら血走った目で、上は下着あとは合皮で走る私は、
嘔吐しそうな変質者状態。
やっとの思いで会場に着くと、あれ…?随分静かだぞ…?
コスプレの人なんぞいない。
それどころか会場付近に係員以外いない。

恐らく先ほど私がラジオで聞いていた時が盛り上がりのピークで、
もう夕方も過ぎた今は通常営業、
よく考えてみたらコスプレして来るような気合いの入った人は、
もっともっと早く来て満喫して、夕方辺りにはお腹いっぱいなのだろう。

予想外のまったり空気に出ばなを挫かれ、
羞恥心がもりもりとわき上がるのを感じつつ、
手描き口ひげを披露しながら入り口で「一枚。」、
微妙な微笑みを誘いながらチケットを無事に入手、
さて、と思うと二人組が近づいて来た。
「写真撮っていいですか?」

反射的に口ひげ方面に手を運びながら動揺しつつわけを聞いてみると、
主催だか共催だかの会社のスタッフで、
コスプレをしてきた人を記録に残すことになっているそう。
ああ…もっと気合い入れたかった、
まさか写真だなんて、コスプレした人たちで撮ったら楽しかろう、
完璧なコスプレなら誇らしくその姿をおさめもしよう、
少なくともこんな程度でも友人と来ていたらウケ狙いにもなろう、
しかし私は今一人、手描きの口ひげ、下着姿。

だが、カメラを向けられた途端何かどうでもよくなり、
とりあえずフレディ的なポーズ(今思うとそんなでもない)で、
「あ、なんかわかるそのイメージ(笑)」
などと言われながら悪ノリ寸前で写真撮影。
その後しばらく談笑、
もう少し頭のネジが緩んだら歌っちゃうんじゃないかくらいになった。
開き直りは一番の味方。

その時の写真がどうなったのか知るべくもないが、
記憶を頼りに描いてみると恐らくこんな感じ↓だったと思う。

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一通り恥を晒した後やっと入場、
予想外のハプニングから心機一転心を落ち着け、
二次元フレディと対面。

ああ、見た事がない写真ばかり!
赤ちゃんのフレディ、学生のフレディ、色んなフレディ。
特にミック・ロックの撮った写真は、
フレディが当時こうありたい、と思う像はこうなんだろうな、という感じの、
実に美しい写真が多く、壷を抱えた幻想的な写真の前では、
しばしたたずんでしまった。
とても空いていた中それでも時々お客さんの視線をチラと口元に感じたが、
気にしない。
心は潤えば広くなるものだ。

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(↑見つめ合った写真)

そんなわけで写真展を堪能し、最後にパンフレットを購入。
フレディ三昧で幸せ気分、
思わず口ひげのことをすっかり忘れるところだったが、
会場を後にして2、3歩でハッと思い出して、
慌ててトイレに駆け込み、ひたすら口元を洗う。
じっくり写真に向き合う浮遊感から、現実に戻った気がした。

その後別途あった用を済ませ、
なんとなく桜木町に足を延ばし、馴染みの好きな景色のところに向かう。
土曜日だったため夜のみなとみらいは恋人たちの所有地状態、
そんな中を皮帽子に吹く風もハードボイルドに、
独り奴らの補給地=ベンチを一つ確保。
大音量でクイーンをイヤフォンで聞きながら、
早速パンフレットを開く。
薄いものだが未掲載の写真も思い出しつつなめるように眺め、
キラキラと美しいみなとみらいでフレディ命日を堪能したのであった。
聞いている曲の良いフレーズと相まって最後の方のページに載る、
赤ちゃんのフレディの写真に、じんわり。
赤ちゃんフレディ↓、
なんて朗らかで健やかで明るい笑顔の赤ちゃんなのでしょう!

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と、こんな風に過ごした10年前の24日は、
非常に印象的な日だった。

ちなみに、そもそもその日に行くことにした発端、
記念品とは、銀色のQueenのロゴとエンブレムが上部にさりげなく入った、
白い便せんだった。
えっ…
フレディのグッズじゃなく、これ?これだけ…
と思ってしまったのは確かであるが、
そのためにした涙ぐましい間抜けなコスプレも、
その分良い思い出なので、良しとしよう。

さて、フレディ命日記念シリーズ、
次はついにロンドン、フレディの家参りの回!かな?




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フレディ・マーキュリー、道化師は誇り高き王 [音楽]

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Freddie Mercuryの命日がもうすぐだ。

昔、なんとなくCDレンタルショップでクイーンのアルバムを手に取った瞬間、
ズキューン!とフォーリン・ラブしてから以来、彼を常に敬愛している。

瞳に惚れてからとりあえずベスト盤を聞いてびっくり、
たたみかけるような個性溢れる曲、曲、曲で空間がねじれたかと思ったが、
一度はまったらもう中毒一直線。
音にも惚れ、曲にも惚れ、バンドにも惚れ、メンバーそれぞれ好きだったが、
特にフレディにぞっこんとなり、
思春期真っ盛りだったせいか脳内で同居状態、
花を見てはフレディといるつもり、
オペラを聞いてはフレディと聞いているつもり、
まだインターネットに疎かったのであらゆる書籍・映像を血眼で探しまくり、
とりあえずクイーン楽曲を歌いまくり、
架空の会話を無言でするに至るほどのめりこんでいた。

フレディに惹かれた理由は、
顔(特に眼)を初めとして歌声その他星の数ほどあるのだが、
知れば知るほどの魅力、その人物像そのものも大きい。
それが伝聞でしかなくとも、虚構の集合で一片の真実も語られている、
という前提で。

フレディは誇り高い。
Queenなんて命名してしまうのが完全にしっくり来るほど、
ごく若いうちから「スター」である自負を密かに抱き、
豪奢なものを好み、貴族的趣味、
その美意識の赴くまま堂々と生きていた。
上の写真↑のような王冠と毛皮が彼ほど似合う人がいるだろうか。

それでありながら、その個性的な美意識は、
時に常人には理解できないオドロキの趣味にぶっ飛ぶ。
扇ですかそれはみたいなケープはまだしも、
全身タイツに胸毛コンニチワとか、
全身目玉だらけ+赤い紐みたいな衣装とか、
スーパーマンに肩車とか、
しましまパンツにサスペンダーだけとか、
何故かベティちゃんのTシャツとか、
いったい何がどうしてこうなった、
という奇抜な衣装も多い。
ソロのPVのやりたい放題もオドロキと感心でいっぱいになる。

それをただ奇抜であろう、ショックを与えてやろう、という策ではなく、
どうも本当に好きでやってる感じが、誇り高い。
当時からフレディは一部ではお笑いすれすれ、
というかお笑いそのもの的なイメージも持たれていたようだが、
堂々と実践し続け、誇らしい感じさえしてしまうのが素晴らしい。
初期のステージでのシャンパン片手に「これは本当のダイアモンドだよ」
なんて指輪を見せびらかすパフォーマンスなんて笑わせるためとしか思えないが、
どうも半ば本気で満足しているっぽいところが…
だから逆に決してステージを過剰にシアトリカルにすることもなく、
パフォーマンスに頼りきることもなく、あくまでミュージシャンであった。

彼は世界の道化であり、世界の王でもある希有な人だ。
笑われようが、満足して、「優雅なお辞儀」で返す、
そんなノーブルな道化であり、世界と自分自身を楽しませる。

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(↑これぞ世界の道化師。)

シアトリカルにする必要がない、
それはフレディ本人が充分シアトリカルだったから、ということもある。
性格的にも、境遇も。
特に境遇は。

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(↑ザンジバルでのフレディ、母上と。花輪がかわいいぃ〜!
なんとも異国情緒に溢れている。)

ペルシア系インド人、パルーシー教徒のバルサラ家の長男として、
アフリカの孤島・ザンジバルに生まれた、
フレディことファローク君は、
多くの召使いに世話された裕福な幼年時代を過ごし、
学校はインドの英国式全寮制スクールへ。
ここでスポーツに音楽に優等だったおぼっちゃまだったファローク、
14歳の時革命のためイギリスに亡命、
一転して暗く寒い国土で「移民」という立場に立たされたファローク、
元々の夢見がちでシャイな性格を強くして行く…

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(↑インドの学校でのフレディ。明るいようなシャイなような感じが可愛い。ちなみに真ん中。)

フレディが殆ど生前口にしなかったこの若い頃の経歴は、
人によってはことさらドラマチックに吹聴しそうなものだが、
彼の誇りはそれを良し、としなかった。
本当の人生が始まるまでは、どんなドラマチックなことでも口にしない。

美術学校に入学したフレディ、
まわりに派手な生徒がいるため目立たない笑い上戸の細身の生徒、
歌真似をしても大した注目も浴びずに友人のバンド練習にくっついている、
自分でもバンドに入ってみるが鳴かず飛ばず、
しかしついに前からちゃちゃを入れていたバンドに加入することに、
そのバンドに名前を与え、
そして「フレディ・マーキュリー」と名乗るようになる。

おそらくここで初めて本当の人生が始まり、
世界の道化かつ王である「フレディ・マーキュリー」が誕生したのだろう。
そして抑えていた欲望、美意識、芸術が溢れてゆく。
それでも、フレディ・マーキュリーは、
ファローク・バルサラだったから生まれたわけであって、
両者はフレディのファンタジーの中で融合し、
空間と時間を超えてひとつの大きな個性を作り出したのだろう。

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(↑まだバルサラ時代のフレディ、敬愛するジミヘンの真似ショット!
ギターを弾くのではなく姿を真似しちゃうあたりが好感。
このブレスレットフレディっぽい!とか言って身につけてるのと近い。
更に美大時代、フレディはジミの絵をやたらと描いていたのだが、
ここらへんも共感。)

フレディは自分の美意識から外れることはしないし、口にしない。
クイーンは80年代、南アフリカでライブを決行するにあたり、
差別国家に迎合するのか、ファシストバンドめ、
と散々バッシングされたのだが、
実はフレディが、その西洋の糾弾者がほとんど行ったことのないアフリカで生まれ、
幼少期に差別を目の当たりにし、更には本人も「西洋白人」ではない、
というのは皮肉である。
けれど彼はその事実を使っての反論は全くしなかった。
更にその死においても、HIVのことを世に知らせる旗手となれたはずだ、
という声も死後あがったが、死の前日までアナウンスはしなかった。

政治的な発言も音楽も好きではない、と言っていたその通り、
徹底的に個人主義を貫き、自分の美意識の通りに生きたその姿は、
実に潔い。
ただ見ている時、聞いてる時、楽しんでくれればいいんだ、
その単純な哲学に裏打ちされた、素敵な美意識、
完璧なエンターテイナーである。

ああフレディよ、君に乾杯!

ところで、フレディが自ら命名した「マーキュリー」だが、
マーキュリーとはローマ神メルクリウスの英語読み、
ギリシア神話のヘルメスと同一視される神で、
他の神の使者となったり旅人の守り神となったりするのだが、
フレディは自分の芸術の使者となるべく、この名前をつけたのだろうか。
なにしろ、この神は「翼のついた帽子やサンダル」を身につけ、
ケーリュケイオンと呼ばれる短い杖を持っているのだ。
それは初期フレディのステージ衣装にあらわれる翼、
そしてあの短いマイクスタンドで再現されている。
あまり言及されることはないが、このフレディのヘルメス化はとても面白い。
流石自らの美意識に忠実なフレディ!である。

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(↑翼と杖のようなマイクスタンド。
本当に彼は「マーキュリー」になっていたんです!)

ということで、命日までまだあるので、
いくつかフレディの記事を書こうかと思うので、続く…



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